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債務整理と返済について

自己破産の申立件数は2003年をピークとして減少を続けています!

投稿日:

20150818

自己破産…言葉だけ聞くと怖いですよね。借金に無縁な人はそう思います。
この自己破産、年々申立件数が減っているというのです。これはなぜでしょうか?

裁判所のデータを突き合わせながら検証していきたいと思います。

債務を放棄するための法的手続きが自己破産です!

自己破産は債務を放棄するための法的手続きであり、経済的困窮により本人の努力ではどうしても債務が返済できない場合などに、裁判所の判断により認められることになります。

自己破産については景気が悪くなると増えるのではないかというイメージが強いのですが、実際には自己破産の申立件数は2003年をピークとして減少を続けています。

これはなぜなのでしょうか?

自己破産の申立件数の推移は?

個人が自己破産を申し立ててた件数の推移については、最高裁判所の集計によるデータが発表されています。

これによると2003年が申し立てのピークとなっていて、その後は申立件数が減少していることが確認できます。

下記のように1998年から2003年の時点では自己破産の申立件数は年間25万件を超えていたのですが、以降は年度ごとに減少を続け2012年の時点では年間10万件以下となっています。

現在もこの減少傾向は継続しているようです。

  • 1998年→105468件
  • 1999年→122741件
  • 2000年→139281件
  • 2001年→160419件
  • 2002年→214633件
  • 2003年→242377件(申立件数のピーク)
  • 2004年→211402件
  • 2005年→184294件
  • 2006年→165917件
  • 2007年→148276件
  • 2008年→129508件
  • 2009年→126265件(2003年度のほぼ半分に減少)

この変化は、一見喜ばしいことのように思われますが、現実はそうともかぎらないようなのです。

上記の12年間を合計すると申し立ての件数は200万件近くとなり、日本の総人口の1.5%程度が自己破産を申し立てていることになります。

やはり自己破産の申立件数は、高水準で推移しているといえるのかもしれません。

2003年まではなぜ自己破産の申立件数が増えたのでしょうか?

2003年までの間自己破産の申立件数が増加を続けてことについては、景気が低迷して借金の返済に困った人が増加したことだけではなく、さらに自己破産の制度が多くの人たちに認知されたことが大きな理由となっています。

かつては自己破産を申し立てると仕事も家庭も滅茶苦茶になってしまうというイメージが強く、自己破産についてはマイナスのイメージが強すぎて申し立てを躊躇してしまう人が多かったのです。

しかしその後、自己破産をしても影響は一部に限られるということが、幅広く知られるようになりました。

自己破産をしても資格が必要な一部の職業以外は従来通り働き続けることができますし、賃貸のマンションやアパートなどにもそのまま住み続けることができます。

選挙権なども制限されませんし、上手に手続きを行えば家族や友人や会社などに知られることなく自己破産ができますので、以前よりも気軽に自己破産の申請を行う人が増加したのです。

さらに弁護士などの専門家の活用が身近になったことも、理由としてあげられるでしょう。

自己破産の申立件数が減少した6つの理由

自己破産申請が減ったということは、借金を抱えている人たちが減ったか、完済し終わったのだと思ってしまいがちです。

しかし、日本の景気はそんなによくなってきているとは言い切れません。

2003年以降は景気が低迷を続けたのにも関わらず、自己破産の申立件数は減少を続けています。

その理由については専門家の間でも、意見が分かれているようです。

さらにリーマンショックなど世界規模の経済ショックの影響もあったのですが、それにもかからわらず自己破産の申立件数は減少を続けることになったのです。

それではなぜ自己破産の申し立て件数は減少したのでしょうか。

考えられる様々な原因について、さらに詳しく確認してみましょう。

1. 債務と金融に関するルールの変更が行われた

2003年以降の自己破産の申立件数の減少については、債務と金融に関するルールの変更が行われたことが大きく影響しているようです。

2003年に認定司法書士制度が開始

まずは自己破産の申し立て件数が最大となった2003年に、認定司法書士制度が開始されています。

従来は債務整理に関する手続きは弁護士が行うことになっていたのですが、認定司法書士制度では請求額が一定以下であることを条件として、手続きの代理を司法書士が行うことが認めらることになりました。

司法書士が手続きを代理する場合には取り扱う金額が少額であることがほとんどであるため、多くの債務者が自己破産以外の債務整理の方法を選択しました。

その結果自己破産を選択する人の数が減少して、自己破産の申立件数が減少することになったのです。

2. 個人再生の手続きを選ぶ人が増加した

新しい債務整理の方法として、2001年からは個人再生の手続きの選択ができるようになりました。

自己破産を申し立てた場合にはプラスの財産とマイナスの借金を相殺して債務の整理を行うため、自宅などの財産は原則として手放すことになります。

一方の個人再生ではプラスの財産とマイナスの財産を比較して、借金の猶予期間や免除額などを決定することになりますので、自宅などの財産をそのまま持ち続けることができるかもしれません。

さらに資格を条件とする職業にも影響しないなどの様々なメリットがあるため、近年では自己破産ではなく個人再生の手続きを選ぶ人が増加しているようです。

ただし個人再生の申立件数は年間2万5千件程度ですから、自己破産の申立件数の減少の理由がすべて個人再生が原因だと考えるのは無理があるかもしれません。

3. 高額の利息を請求する金融業者が減少した!

いわゆるヤミ金融対策法が2003年に施行されたことなど、正規・非正規の金融業者への規制が強化され、高額な利息を請求する金融業者が減少しました。

法律の制限を超える高額な利息を請求する金融業者にとってはメリットよりもリスクが大きくなり、ビジネスそのものが成立しなくなってしまったのです。

高額な利息を請求する金融業者の多くは廃業に追い込まれ、その結果として自己破産を申し立てる人の数も減少しました。

4. 任意整理を選ぶ人が増加した

任意整理は自己破産や個人再生などの債務整理の手続きとは異なり、裁判所を介さずに個人と業者が直接話し合いで解決を目指す方法になります。

ただし実際には債務者個人が金融業者と話し合いを行うことは難しいため、弁護士や司法書士などの法律の専門家が間に入ることが多いようです。

任意整理の手続きが一般化したことについては、過払い金請求の手続きが関連しています。

自己破産の申し立てを検討する人の場合には債務が多額であり、長期間の返済を続けていることがほとんどです。

5. 2006年からは過払い金の返還請求が認められるようになった

かつての消費者金融では「グレーゾーン金利」と呼ばれる高額の利息を請求することが一般的でした。

しかし、その後最高裁判所の判断によりグレーゾーン金利は違法な金利であることが認められ、2006年からは過払い金の返還請求が認められることになりました。

グレーゾーン金利は利息制限法による上限を超える金利であるため、上限を超過する分については過払い金の返還請求で取り戻すことが可能になったのです。

グレーゾーン金利が一般的だった時代には債務超過に陥って自己破産を申し立てる人が多かったのですが、過払い金請求により借金の軽減が可能になったことで自己破産の申し立て件数は大きく減少しました。

6. 2010年には改正貸金業法が施行された

最後に2010年には改正貸金業法が施行され、借り入れの限度額を最大で年収の3分の1までに制限する総量規制が適用されることになりました。

個人が返済能力の範囲を超える過度な借り入れをすることが難しくなったため、これに伴って多重債務に陥って返済不能となる人が減少し、自己破産の申し込み件数も減少したのです。

ちなみに複数の借り入れをひとつにまとめて返済をしやすくすることを目的とする「おまとめローン」は、総量規制の適用対象外とされました。

複数の借り入れを利用している人の場合にはおまとめローンを活用することで返済の負担を軽減することができますので、おまとめローンも自己破産の申立件数が減少した理由のひとつであるといえるでしょう。

この先将来はどうなっていく?

データからは自己破産の申立件数の減少傾向が確認できるのですが、実際には個人再生や任意整理を選択する人が増えただけであり、多重債務に関する問題そのものは以前と変わらないようです。

経済的な困窮による自殺者の数は以前よりも増加していますし、過払い金返還請求の鎮静化や不況の長期化などにより、今後は自己破産の申立件数がさらに増加することが予想されています。

債務者にとっては資金繰りの手段が少なくなって苦しくなる側面も…

また、改正貸金業法によって厳しくなった与信判断のせいで、債務者にとっては新たな資金繰りが難しくなっています。

自己破産手続きの件数が減っているとはいえ、借金そのものが減っているわけではありません。

政府の統計だけ見ると明るい数字が並んでいるようですが、じっさいの景気状況はそれほど甘くはありません。

いま現在でも200万人もの人が多重債務で苦しんでいるとのことです。ヤミ金の世界からの誘いはあいかわらずで、借金苦で自殺してしまう方は後を絶ちません。

たしかに、自己破産をしなくても、「任意整理」も「特定調停」も、信用情報機関にはブラック情報として登録されてしまいます。

ですが、追い込まれてぜったいに手を出してはいけない業者に手を出すよりはよっぽどましです。

家族や知人に大きな迷惑をかけるまえに、小さな迷惑で怒られるほうを選びましょう。

まとめ

以上自己破産の申告件数についての考察でした。

申告件数がなぜこんなにも増減しているのかおさらいすると

  • 2003年まで自己破産の申立件数が増えたのは借金の返済に困った人が増加&自己破産制度が認知度が高まったから
  • 自己破産の申立件数が減ったのは債務や金融に関する大幅なルール変更のため
  • 個人再生や任意整理を選ぶ人が増えたから

の3つが挙げられます。

そのため今後も、現行制度が変更されない限りは自己破産の申立件数は増えることはないのではないでしょうか。

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